基本的なシミュレーション手順
物件投資のシミュレーションを行う基本的な手順を詳細に説明します。各項目の意味と適切な数値の設定方法、結果の読み方まで網羅的に解説します。
事前準備:必要な情報の収集
正確なシミュレーションのためには、以下の情報を事前に調べておく必要があります。
必須情報
物件価格:売買契約書または売却価格
土地代金と建物代金の内訳も重要(税務計算のため)
仲介手数料は別途入力するため、物件価格のみを入力
年間家賃収入:満室時の年間賃料合計
月額賃料 × 12ヶ月で計算
複数戸の場合は全戸の合計額
管理費・共益費は含めない
築年数:建築年から現在までの経過年数
登記簿謄本で正確な建築年月を確認
減価償却計算に直接影響
物件種別:戸建てまたはアパート
税務上の取り扱いが異なる場合がある
経費率の目安も種別により異なる
詳細情報(推定でも可)
空室率:地域の空室率データを参考
都市部:3-8%程度
地方都市:5-15%程度
過疎地域:10-20%程度
不動産会社や役所で地域データを確認可能
経費率:物件種別と地域による目安
戸建て:15-25%程度
アパート:20-30%程度
築古物件は修繕費が多くなる傾向
リノベーション費用:現地確認後の見積もり
水回り交換:50-150万円
内装フルリフォーム:100-300万円
外壁・屋根修繕:100-500万円
ステップ1:物件基本情報の入力
シミュレーションページの「物件情報」セクションで基本情報を入力します。
入力項目の詳細
物件価格
入力例:8,000,000(800万円)
注意点:
カンマは自動で挿入されます
仲介手数料・登記費用は含めない
リノベーション費用も別項目で入力
税務上の建物割合:
土地:建物 = 3:7〜2:8程度が一般的
固定資産税評価額比率で按分
建物部分のみが減価償却対象
年間家賃収入
計算方法:月額賃料 × 12ヶ月
入力例:1,200,000(月10万円×12ヶ月)
注意点:
満室時の収入を入力(空室率は別項目で調整)
礼金・敷金は含めない(一時金のため)
駐車場代がある場合は含めてOK
地域相場の調べ方:
SUUMO、HOME'Sで類似物件をチェック
地元不動産会社にヒアリング
既存入居者の賃料も参考に
築年数
確認方法:登記簿謄本の「表題部」を確認
計算方法:現在年 - 建築年
減価償却への影響:
法定耐用年数(木造戸建て:22年)を超えると特別ルール適用
築古物件(22年超)は4年で償却可能
税務メリットが非常に大きい
ステップ2:ローン情報の設定
ローンを利用する場合の詳細設定です。現金購入の場合はスキップできます。
ローン利用の有無
投資戦略により選択が変わります:
ローン利用のメリット:
レバレッジ効果で高いROIが期待できる
複数物件への投資が可能
ローン利息は経費計上可能
現金購入のメリット:
金利リスクがない
キャッシュフローが安定
審査不要で取得可能
ローン条件の入力
借入金額
一般的な融資率:
築浅物件:物件価格の80-90%
築古物件:物件価格の60-80%
自己資金は最低20-30%必要
入力例:6,000,000(600万円)
金利
築古物件の一般的金利:
都市銀行:2.0-3.5%
地方銀行:1.8-3.0%
日本政策金融公庫:1.5-2.5%
ノンバンク:3.0-5.0%
入力形式:2.5(%は自動で付加)
返済期間
築古物件の返済期間:
法定耐用年数 - 築年数 が上限
築22年超の木造は短期間(5-15年)
金融機関により独自基準あり
戦略的考慮:
短期:月々返済額が高いが総利息は少ない
長期:月々返済額は低いが総利息は多い
ステップ3:経費・その他条件の設定
より詳細な条件設定で、現実的なシミュレーションを行います。
空室率の設定
調査方法:
総務省「住宅・土地統計調査」で都道府県別データ
地元不動産会社へのヒアリング
周辺物件の入居状況を実地調査
設定例:
東京都心部:3-5%
地方中核都市:8-12%
人口減少地域:15-25%
経費率の設定
不動産投資にかかる年間経費の割合です。以下の項目が含まれます:
経費に含まれる項目
固定費:
固定資産税・都市計画税(年間15-30万円程度)
火災保険料(年間2-10万円程度)
管理会社手数料(家賃の5-10%)
変動費:
修繕費(年間家賃の5-15%)
空室時の清掃・リフォーム費
広告宣伝費(入居者募集)
その他:
税理士報酬(年間10-30万円)
交通費・通信費
書籍・セミナー代(自己研鑽)
リノベーション費用
購入直後の改修費用を設定します。築古物件では重要な項目です。
見積もり方法:
複数の工務店から相見積もり取得
DIY可能部分と業者依頼部分を分ける
緊急性の高い修繕を優先
費用の目安:
軽微な修繕:50万円以下
水回り交換:100-200万円
フルリノベーション:200-500万円
ステップ4:計算実行と結果の確認
すべての情報を入力したら計算を実行し、結果を詳しく分析しましょう。
基本指標の読み方
表面利回り
計算式:年間家賃収入 ÷ 物件価格 × 100
判断基準:
10%以上:高利回り
7-10%:標準的
7%未満:低利回り
注意点:経費や空室を考慮していない単純指標
実質利回り
計算式:(年間家賃収入×(1-空室率) - 年間経費) ÷ 物件価格 × 100
重要性:実際の収益性を示す最重要指標
判断基準:
8%以上:非常に優良
5-8%:良好
3-5%:普通
3%未満:要検討
キャッシュフロー分析
年間キャッシュフローは最も実感できる収益指標です。
プラスの場合:
毎年手元に現金が残る
追加投資や生活費に活用可能
安定した投資と言える
マイナスの場合:
毎年持ち出しが必要
税務メリットや売却益に期待
十分な資金余力が必要
高度な指標の活用
ROI(投資収益率)
意味:自己資金に対する年間収益率
活用法:他の投資商品との比較
目標値:10%以上あれば優良投資
NPV(正味現在価値)
意味:将来キャッシュフローの現在価値合計
判断基準:
プラス:投資価値あり
マイナス:投資を見送るべき
IRR(内部収益率)
意味:投資全体の実質的な年利回り
活用法:複数物件の比較指標
目標値:15%以上あれば魅力的
ステップ5:結果の保存と活用
シミュレーション結果を効果的に活用するために、保存と管理を行います。
保存時のポイント
分かりやすい名前:「○○市戸建て_築25年_800万円」など
詳細なメモ:
物件の特徴(駅徒歩、間取り、状態等)
検討事項(修繕箇所、リスク要因等)
不動産会社の情報
タグ付け:「高利回り」「要修繕」「即決可能」等
複数物件の比較
保存したシミュレーションを使って、複数物件を客観的に比較できます。
比較項目:
実質利回り
年間キャッシュフロー
投資回収期間
リスク要因
総合判断:
数値だけでなく立地・将来性も考慮
自身の投資戦略との適合性
管理のしやすさ
✅ シミュレーション完了後のアクション
現地確認:実際に物件を見て数値の妥当性確認
金融機関相談:融資条件の実現可能性確認
税理士相談:税務メリットの最大化検討
管理会社選定:賃貸管理体制の構築
購入決断:総合的な判断で最終決定